ベンダーなどが流すECBの「翌日物預金」とは、「預金ファシリティ(Deposit facility)」のことを指す。そもそも、ECBも預金準備制度なので、金融機関は中央銀行の当座預金に所用準備額を積むことが義務付けられている。このとき、ECBはこうした準備預金のうち、所用準備額に相当する分については、MROの足切りレートを平均したレートを付利している。そして所用準備額を超える預金(超過準備)については付利を行わず、一方で積み最終日に所用準備額を下回っている場合には、限界貸付ファシリティ(Marginal Lending Facility)を使って、資金を借り入れる必要がある。ところで、ECBでは、超過準備については付利を行なっていないが、預金ファシリティには付利を行なっている。従って、金融機関にとって、所用準備額を超える資金については、超過準備として当座預金に預けておくよりも、預金ファシリティを利用するインセンティブが働く。
預金ファシリティと限界貸付ファシリティには、金利が定められている。現時点で預金ファシリティの金利は政策金利の-75bp、限界貸付ファシリティを利用する際に適用される金利は政策金利の+75bpとなっており、この金利体系を一般にコリドーという。
ここまでの話をまとめると、資金フロー的には以下のようになる。
・金融機関は適格担保により中銀(ECB→各国中銀)から資金を借り入れ、当座預金に
・オペによりECBから借り入れた資金は、当座預金から、ECBの預金ファシリティへ、もしくは一部市場へ。
・ECBは市場から周縁国国債を買い入れる(ECBの資産)が、その際支払われた資金はターム物預金へ(ECBの負債)現時点でECBのバランスシートは急拡大しているが、フローから見れば大まかには資産サイドのLTROなどのオペと負債サイドの預金ファシリティが急拡大したに過ぎない。現状及び今後において、余裕のある銀行がより高い運用先を求め、一部資金を銀行間取引市場に流す可能性もある。現在徐々にではあるが、EURIBORは低下基調にある。問題はカウンターパーティリスクをどこまで取り除けるかであるが、これについては急速に改善することは難しい。また、オペ資金が一部周縁国の国債に流れるのではないかという観測もあり、期待も持たれているのだが、「EBAェ...」ということになってしまっており、なかなか難しいという見方が大勢のようである。