いま日本経済で起きている本当のこと―円・ドル・ユーロ大波乱!

いま日本経済で起きている本当のこと―円・ドル・ユーロ大波乱!

  • 総じて、自分で考えていることを同じ向きを向いているので、読んでて面白いし素直に頭の中に入って来ます。作者さんの他の本も機会があれば読んでみましょう。

p.60
しかも70年〜80年代までは価格変動や消費者のきまぐれで輸出額が大幅に変動する最終消費財の輸出が多かったが、いまや、価格ベースで輸出品目の70%以上が資本財と中間財(電子部品や工業原材料)である。これは外国メーカーが生産工程で必ず使わなければならないモノだから、価格が割高だろうが、円高で買いにくくなろうが、他国の部品や製品で我慢しようとする可能性はかぎりなく低い。

p.60
日本の経常収支黒字は貿易収支を見ただけでも70年代に比べるとはるかに巨額になっている。だが、いまや、日本の経常収支で黒字貢献度ナンバーワンは貿易収支ではない。所得収支(日本が過去、外国で投資や融資をした資金に対する配当や金利収入の総額から、外国から日本に対して投資や融資をしている資金に対する配当や金利支払いの総額を引いた数字)なのだ。これは現在の為替レート次第で売買内容や数量が変わる性質の数字ではなく、過去の投資や融資から得られる果実だ。この分野でいったん黒字を確立すると、円高で黒字が目減りするとか逆に円安で黒字が拡大することはあろうが、赤字に転落することはほとんどあり得ないと言ってもいい。

p.65
日本の輸出品は内容がまったく違う。価格弾性力が小さく、外国から見ればどんなに割高になろうと、きちんとした品質の製品を作りたければ、日本製の資本財や中間財を使わざるを得ない。輸入するしかない。そう言う製品が大半なのだ。
(中略)
日本経済の円高抵抗力については、これだけはっきりしたデータがあるのだ。
(中略)
韓国の貿易収支を見るがいい。一貫して、韓国は日本以外の対世界貿易黒字が拡大すればするほど、対日貿易赤字が拡大するという構造になっている。最近は中国やインドネシアも、対世界貿易黒字が拡大すればするほど、対日貿易赤字が拡大する傾向に変わりつつある。何のことはない。自国製品が世界市場で売れている要因は、日本の資本財、中間財あればこそなのだ。これを日本では「共存共栄」と呼ぶ。

p.79
(中国)共産党の路線には大きく分けて二つある。一つは、日本で言えば、かつての小泉・竹中路線=市場経済最優先という政策である。習近平がそうだ。もう一つは沿岸部だけが裕になるのではなく、内陸部にも冨を回そう、格差を是正して平均的に裕になろうという路線=胡錦涛温家宝の路線である。つまり、今回の人事で習近平が二年後の総書記候補筆頭に選ばれたという事実は、中国の政策路線大転回を意味している、と判断すべきであろう。

p.131
ミセス・ワタナベとは、特定の渡辺さんの奥さんを意味するモノではない。世界中でプロ中のプロと呼ばれている機関投資家たちをきりきり舞いさせている日本の個人投資家を意味する隠語のようなものだ。

p.199
実態として問題なのは、利倍費がいくらかと言うことの方だ。利払い費がいくらかと言うことについて言えば、今の金利状況は、超のつく低金利だ。10年前、20年前に比べて、利払い費負担ははるかに小さくなっている。だから、いままで刈り続けてきた国債を借り換えると、財mすほうが支払う金利総額は下がっていく。

p.201
絶対に間違えてはいけないのは、国民が国に依存しているのではなく、国が国民に依存している、という点だ。しかも、国がこれだけ国民に対する借用証(=国債)を乱発したにもかかわらず、外国為替市場で円が急落することもなければ(逆に円高である!)、貿易収支や経常収支が突然赤字に転落するわけでもない。全て日本国民が強い経済を作り上げている賜である。いま、日本の長期金利の指標である新発国債10年物の利回りは1%を切っている。ユーロ危機でリスクをヘッジした機関投資家が一斉に株を売却して国債に走ったためである。いまや日本国民のみならず世界中の投資家が日本国債を購入しているのだ。たとえ金利は低くても、日本の国債ほど安全確実な商品はないと世界が認めている証拠ではないか。日本のメディアの自虐趣味につき合う必要はない。