LIBOR-OIS Spread

OIS: Overnight Index Swap

OISとは、一定期間の翌日物レート(複利運用)と、数週間から2年間程度
までの固定金利を交換する金利スワップである。わが国においては、日本
銀行が公表している無担保コールレート(O/N)の加重平均値を取引対象
とする取引が、OTC(Over the Counter:店頭における相対取引)で行わ
れている。
欧米の中央銀行(ECB、FRB)8による金融政策との関係では、これらのデ
リバティブ取引は、操作目標そのもの、あるいは操作目標と密接に関連す
る翌日物レート(欧州:EONIA9、米国:FFレート10)の予想を直接の取引
対象としているため、金融政策スタンスに対する市場の見方を観察するの
に適している。
OISを利用する主なメリットとして、以下の点が考えられる。

まず、翌日物レートを取引対象としているため、主に翌日物資金の運用・
調達を行う市場参加者にとっては、3か月物や6か月物金利を取引対象とす
るデリバティブと比べ、よりきめ細かなリスク管理を行うことが出来る。
特にOTCであれば、スタート日やタームを、ヘッジ対象に合わせて柔軟に
設定出来るため、ヘッジ手段としての利便性が高いというメリットがある。

また、より幅広い市場参加者にとっても、政策金利の見通しをもとに、タ
ーム物レートとの裁定を行うための有益な取引手段となる。前述のように、
FBなどの現物債券との裁定手段となり得るほか、現物債券の代替的な取引
手段としても利用できることから、バランスシートの拡大や現物債券の手
当て・資金繰りに伴うコストを回避したい市場参加者には、特に大きなメ
リットがある。

LIBOR-OIS Spread

  • いろいろ調べていたら、こちらの資料が最も分かりやすかった。PDFを直接印刷したので気づかなかったけど、出所はセントルイス連銀じゃないか。
The 3-month London Interbank Offered Rate (LIBOR) is the interest 
rate at which banks borrow unsecured funds from other banks in the 
London wholesale money market for a period of 3 months. 

Alternatively, if a bank enters into an overnight indexed swap 
(OIS), it is entitled to receive a fixed rate of interest on a 
notional amount called the OIS rate. In exchange, the bank agrees 
to pay a (compound) interest payment on the notional amount to be 
determined by a reference floating rate (in the United States, 
this is the effective federal funds rate) to the counterparty at 
maturity. 

For example, suppose the 3-month OIS rate is 2 percent. 
If the geometric average of the annualized effective federal funds 
rate for the 3-month period is 1.91 percent, there will be a net 
cash inflow of $2,250 on a principal amount of $10 million [(2 
percent . 1.91 percent) × 3/12 × $10 million = $2,250] to the 
bank from its counterparty.
  • 3ヶ月物LIBOR金利は、銀行がロンドン市場を通して他の銀行から3ヶ月間無担保で資金調達する場合の金利である。
  • 一方、もし銀行がOISを利用する場合、OIS金利と呼ばれる国内の固定金利を受け取る権利を得る。引き替えに、その銀行は満期時に(複利運用の)政策金利(米国であれば実効FF金利)で定められる金利を支払うことに合意する。
  • 例えば、3ヶ月物OIS金利が2%とする。もし、実効FFレートを年換算した加重平均の3ヶ月分が1.91%であれば、そこには想定元本$10 millionに対して$2.250のnet cash inflowが生じる。
A bank borrowing at the 3-month LIBOR rate of 2.10 percent that 
enters into a swap to receive at the 3-month OIS rate of 2 percent 
has a borrowing cost equal to the effective federal funds rate 
plus 10 basis points. 

Entering into the OIS exposes the bank to future fluctuations in 
the reference rate. 

However, the bank can guarantee itself longer-term funding while 
still paying close to the overnight rate. 

Because the alternative would be rolling over the funds on a daily 
basis at changing overnight rates, banks are willing to pay a 
premium.
  • 2.10%の3ヶ月物LIBOR金利で資金調達した銀行が、2%の3ヶ月物OIS金利を利用した場合、FF金利 + 10bpの調達コストに等しい。
  • OISを利用することは、その銀行を将来の政策金利の変動リスクに晒すことになる。
  • しかし、その銀行はオーバーナイト金利の近傍で支払いを続ける一方で、より長期間の資金調達を保証することが出来る。
  • 何故ならば、変動するオーバーナイト金利で日々償還される資金が代替となるからである為???、銀行は喜んでプレミアムを支払う。
    • この一文が分からないな。試しにGoogle翻訳にかけてみたけど、さらに分からなくなった件。orz
代わりに、翌日物金利を変更することで、日常的に資金をロールオーバーされるため、
銀行は保険料を支払うことを喜んでいる。
    • 英文和訳なんてやったのは実に久しぶりだけど、英語は英語のまま理解するのが最も効率的です。英語だと頭から読み進めばよいけど、日本語にすると逆順に読み直して主語・述語と結合しないとならないので、訳が分からなくなる。orz
In times of stress, the LIBOR, referencing a cash instrument, 
reflects both credit and liquidity risk,1 but the OIS has little 
exposure to default risk because these contracts do not involve 
any initial cash flows. 

The OIS rate is therefore an accurate measure of investor 
expectations of the effective federal funds rate (and hence the 
Fed’s target) over the term of the swap, whereas LIBOR reflects 
credit risk and the expectation on future over night rates.
  • ストレス下において、資金調達手段であるLIBORは、信用リスクと流動性リスクの両方を反映する。しかし、OISはデフォルトリスクにほとんど晒されていない。何故ならば、これらの契約はいかなる初期キャッシュフローも含んでいないからである。
  • そのため、OIS金利は、投資家が期待するスワップ期間中の実効FF金利(及び連銀の政策目標)の正確な尺度となる。それに対して、LIBORは信用リスクと将来のオーバーナイト金利への期待を反映する。

簡単にまとめ

  • 多分、知りたかった情報はこの辺に集約されているはず。多少の誤解もあるだろうけど、大筋を間違えてなければよし。
OIS rates are an important measure of risk and liquidity in the 
money market,[2] considered by many, including former US Federal 
Reserve chairman Alan Greenspan, to be a strong indicator for the 
relative stress in the money markets.[3] 

A higher spread is typically interpreted as indication of a 
decreased willingness to lend by major banks, while a lower spread 
indicates higher liquidity in the market. 

As such, the spread can be viewed as indication of banks' 
perception of the creditworthiness of other financial institutions 
and the general availability of funds for lending purposes.
    • 理由は、相手が信用できないため高額な金利を要求せざるを得ない、手元に資金を残しておきたいなどがあるのだろうけど、この状態を信用収縮(Credit Crunch)と呼ぶのかな。

おまけ

昨夏の市場混乱以降、各通貨のLibor-OIS スプレッドの相関が非常に高い
ことである。例えば、何れの通貨も、2007 年9 月、12月、2008 年3 月に、
スプレッドが急拡大した。高相関の背景には、幾つかの要因が考えられる
が、ドル資金市場の需給逼迫に直面した金融機関の資金調達行動が一因に
なっていると考えられる。すわなち、ドルの資金繰り難に直面した金融機
関は、ドル資金市場でドルを調達するのみならず、ユーロや円で資金を調
達し、為替スワップ市場でドル転する動きを強め、結果としてユーロや円
の資金市場でも緊張感が高まったと考えられる。
銀行間取引の指標金利であるLibor は、基本的には、対象期間中の政策金
利の見通しに、クレジットリスクや流動性リスクに対するプレミアムを上
乗せした水準に決まる。クレジットリスクが勘案されるのは、Libor が無
担保の銀行間貸出にかかる指標レートだからである。資金の貸し手は、借
り手のデフォルトリスクを、提示レートに織り込む。また、流動性リスク
が勘案されるのは、資金繰りに関する不確実性が高まると、金融機関にお
いて、手許資金を厚めに保持するインセンティブが働くためである。すな
わち、短期金融市場でストレスが強まると、金融機関は市場でのターム物
資金調達が困難化する。こうした局面では、ターム物調達の前傾化や資金
放出の慎重化を通じて、金融機関の流動性ポジションを維持する動きが広
範化するため、Libor に上昇圧力がかかることになる。一方、OIS は、一
定期間の翌日物金利(O/N 物)と固定金利を交換する金利スワップ取引で
あり、その取引レートは、基本的には、対象期間の政策金利の見通しのみ
を反映する。すなわち、OIS 取引は、元本の交換が発生しないため、クレ
ジットリスクや流動性リスクに対するプレミアムが極めて限定的である。
このため、Libor-OIS スプレッドは、クレジットリスクと流動性リスクの
プレミアムの指標として捉えることができる。
まず、クレジット要因についてみると、その変動に通貨間で大きな違いは
見受けられない。これは、?クロスボーダー取引を行う金融機関が課せら
れるクレジットリスク・プレミアムは、基本的に調達する通貨に依存せず
同一である、?また、Libor のパネル行は通貨毎にほとんど差異がない、
ためである。このように各通貨のLibor に織り込まれるクレジット要因の
変動がほぼ共通していることは、各通貨のLibor-OIS スプレッドが相関す
る一因になっている。もっとも、図表2 にみるとおり、Libor-OIS スプレ
ッドの変動の大部分は、クレジット要因ではなく、流動性要因によって規
定されている。すなわち、短期金融市場での資金需給の逼迫がグローバル
に波及する過程では、クレジット要因よりも、流動性要因が重要な影響を
及ぼしていると考えられる。
流動性プレミアムの波及メカニズムドル資金市場における需給逼迫の主因
は、金融機関がリスクの再仲介(バランスシートの意図せざる拡大)に直
面したことにある3。資金調達が困難となった傘下のABCPコンデュイット
向けの流動性補完やSIV の運用資産の買取りなどから、欧米主要金融機関
の多くがドル資金需要を強めた。また、いつ何時、流動性補完ファシリテ
ィの発動要請を受けるかどうかわからないという不確実性の高まりは、金
融機関のドル資金に対する予備的需要を強め、長めのタームでの資金放出
の慎重化にも繋がった。さらに、資金の需給逼迫は、投資家のデレバレッ
ジ(レバレッジによって拡大させた投資ポジションの圧縮)によって増幅
された。保有資産のクレジットリスクや価格変動リスク、流動性リスクの
高まりに直面した金融機関は、リスク資産の削減を強め、これが流動性の
低い資産を中心に大幅な価格下落を招くこととなった。価格下落による評
価損の計上に伴い、自己資本の低下圧力が高まり、結果として、銀行間の
資金取引の慎重化に繋がった。こうしたドル資金市場での調達環境悪化を
受けて、欧州系を中心とする金融機関は、為替スワップ市場でのドル調達
を積極化させた。そして、為替スワップの原資となるユーロや円に対する
資金調達圧力の高まりが、ユーロ市場や円市場での資金需給逼迫の一因に
なったと考えられる。
ドルやユーロの資金市場で、ショックが増幅されスプレッドに伝播し、か
つその影響が持続的になったのは、米欧金融機関のサブプライム関連商品
に対するエクスポージャーが大きく、それだけに資金調達環境の不確実性
の高まりも顕著であったことが影響している。
既述のとおり、欧州系の金融機関は、ABCP コンデュイットへの流動性補
完やSIV の運用資産の買取りを受け、ドル資金の調達圧力を強めた。ドル
の無担保資金市場での需給逼迫を背景に、これらの金融機関は、ユーロの
無担保資金市場で調達したうえで、為替スワップ市場でドル転する取引を
増やした。このとき、為替スワップの相手方が、受け取ったユーロ資金を
ユーロ資金市場に放出すれば、同市場全体の需給バランスは不変である5。
しかし、相手方の運用期間と運用市場は、欧州系金融機関によるユーロ資
金の調達期間と調達市場とは必ずしも一致しない。(中略)こうしたミス
マッチは、少なくとも短期的には、ユーロの翌日物レポ金利の低下圧力を
もたらす一方、無担保ターム金利の上昇圧力をもたらすなど、各々の取引
期間と市場の需給バランスに影響を及ぼす。金融機関が円投ドル転すると
きも、ユーロ投ドル転の場合と同じメカニズムが働く。