ため池通信

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<7月8日>(水)

〇本日は宮本雄二元中国大使の講演会を聴いてきました。いくつか印象に残った点をメモ。


●日本やアメリカは、コロナのせいで5%や10%のマイナス成長があっても社会はゆるがない。ところが
中国ではそうはいかない。かならず脆弱性が表れる。

――最近の日本はどんどん貧しくなっていて、本当は心配なところがあるのですが、とりあえずCovid-
19で社会は壊れていなくて、「いつか元に戻れる日」を皆が願っている。それはかなり恵まれたことの
ように思えます。


習近平の権力のピークは、任期の延長を決めた2017-18年ごろ。政治はどこの国でも同じ。権力が集
中したから必ず反作用がある。今は太子党もどんどん離れつつある。

――そのように考えれば、昨今の無茶なやり方は、あぁ虚勢を張っているのね、と理解できます。武漢
の状況も、SNSでちゃんと発信されていた、いくら消しても無駄だった、というのは「なるほど」でし
た。


●1990年に香港基本法ができた時点で、香港は外国勢力との関係を持つことを禁止する立法を行うべ
し、と規定されている。それが行われなかったら、とうとう北京が自分で国家安全法案を作る破目に
なった。北京も香港も人がいないから、妥協ができない。このままでは香港の法体系が信用されなくな
る。経済的な繁栄は失われるだろう。

――香港の「一国二制度」が否定されたことで、台湾も受け入れられなくなりましたね。本来は台湾統
一のために生み出されたロジックだったのですが。


中道政治では組織を引っ張れない。良識派には力がない。

――うーん、これは納得。やはり国を動かすのは強硬派。で、その人たちは外国に言うことに耳を貸さ
ない。困ったものだ。


〇もうひとつ、こちらはたまたま読んでいた宮本大使へのインタビュー記事から。これは非常に納得が
ゆくコメントです。


中国外交部と付き合ってきた狭い範囲での経験ではあるが、何か一つのモードに入ると、それに掉さす
情報や意見は彼らの耳に入らなくなってしまう。それまでの状況を彼らなりに分析して、一度、結論を
出し対策を決めると、当分変わらないということだ。それでは、こちらはどうするかというと、何もせ
ず放っておくことに尽きる。そう思い込んでいるので、いくら善意で情報を教えたり意見を述べたりし
ても、何か別の底位があってのことだろうと勘繰られるのが落ちだからだ。そのうち、気持ちが落ち着
いてくると、こちらの話にも耳を傾けてくるようになる。


〇この指摘は米国外交にもぴったり当てはまりますな。大国外交と言うのは、つくづく厄介なものであ
りんす。