- 作者: 田中芳樹(原案),小川一水,森福都,横山信義,羅門祐人
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/04/16
- メディア: 新書
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前作を読み返したところで、所感を書いてみる。
シーオブクレバネス号遭難秘話 森福都
オーシャンゴースト 横山信義
潜水艦 vs. ハンターキラーの戦い。前半の潜水艦の無敵っぷりに比して、後半のへたれ度合いが極端ですが、ストーリーそのものは楽しめました。
しかし、設定に難あり。ブエノス・ゾンデ軍の潜水艦は、ビックフォールダウン以前の原子力潜水艦のレストア。詳細は書かれていませんが、世代的にはU.S.Navyのシーウルフ級とかロサンゼルス級あたりがモチーフでしょう。一方、サンダラー軍のフリゲート艦はビッグフォールダウン後の独自設計。それでいて、主力対戦兵装がが爆雷って...
潜水艦については、ある程度経緯が書かれてますが、水上艦の主力対戦兵装が爆雷に退化した課程は「ホーミング魚雷は開発中」の一言で終わらせてしまい、特に追加の記載はなかった。そこで、頑張って行間を想像すると、
- ビッグフォールダウン時点で地上に存在した文明の構成要素(人口、技術、資料、設備など)は、一切合切全滅した。
- 生き残ったのは月面の人々。航空宇宙分野を中心に、月面・衛星軌道での生存に必要な技術はある一方、地球上に閉じた技術は持っていない。
- 地球上で必要となる技術の大部分は、軍事面も含めて一から立て直す必要がある。
- 誘導ミサイルや誘導魚雷に関する技術が開発途上なのはそのため。前者はオリンポスシステムのため、後者は仮想敵である潜水艦を何処の都市も保有していない(と思っていたため)開発が遅れていた。
- 一方、潜水艦は偶然サルベージされた技術をもとにしているため、突出した超兵器としての扱いになっている。
という感じだろうか。いくら何でも、ここまで読者の想像に頼るのは無茶じゃ無いだろうか。
もしも歴史に…… 羅門祐人
最大のつっこみどころは、プリンス・ハラルド市の軍組織。
本書によれば、プリンス・ハラルド市には正規軍と国防軍の二系統の軍事組織が存在し、後者は前者の退役者を中心に構成され、本土防衛戦力としての位置づけとなっている。そして、ユーリー・クルガンは国防軍参謀長の肩書きを持っている。読んでいて非常に違和感を感じたので、前作を参照してみた。少なくとも、正規軍と国防軍の位置づけに関する明確な解説はない。そして、カレル・シュタミッツ氏の役職は、
- p.95 「ポルタ・ニグレ掃滅戦」では国防軍総司令官
- p.265 「ブエノス・ゾンデ再攻略戦」ではプリンス・ハラルド市正規軍総司令官
であり、ユーリー・クルガンはその配下に在籍している。前者は本土防衛、後者は侵略戦争だから、軍組織の位置づけには矛盾していない。しかし、本書によればユーリー・クルガン氏は国防軍在籍で、正規軍に対してかなりの対抗心を持っていると思われる。しかも、この時点で正規軍総司令官が変更されてないとすると、ユーリー・クルガン氏計画を妨害したのはカレル・シュタミッツ氏ということになてしまわないかなあと。
まあ、読んでて一番違和感があったのは、ユーリー・クルガン氏の性格なんですが。:-p
さて、ここに登場する水面飛翔体は1970年代(?)のソビエト連邦の軍事技術がきっかけになっており、機械考古学という学問分野が存在することを示唆している。次作が発刊されるかは不明ですが、発掘兵器とか、旧世界の文明とか、安直な方向に世界をねじ曲げないで欲しいと思う次第です。これでも、七都市物語は大好きなので。