溜池通信

かんべえの不規則発言

<6月24日>(月)
(中略)
○こんな風に、「書き言葉」が膨大な量でネット空間を飛び交う時代は本来、恐るべきことといえま
しょう。なんとなれば、言葉というものはかならず行き過ぎるようにできている。せめて話し言葉で
あれば、どうとでも解釈できてしまうし、一晩寝たら忘れてしまうこともある。ところが、書き言葉
は後に残る。

○その昔、宮沢賢治は「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」なんて言葉
を残している。そんなことを書いちゃうもんだから、早死にしちゃった(37歳、急性肺炎)。まあ、
彼は詩人だから、それで良かったのかもしれない。言葉に生きて、言葉に死ぬ職業の人だから。この
「農民芸術概論綱要」は今読むとほとんど無価値ですが、「雨ニモマケズ」は今もなお輝きを保って
いる。

○そういう覚悟のない人たちの言葉が、ネット空間を膨大な量で飛び交う世の中である。しかも検索
できちゃうもんだから、昔書いた事に対して、「あのときお前はこんなことを言ってたじゃない
か!」と矛盾を指摘されたりする。当たり前じゃないですか。時間がたてば人間は変わるんだから。
だから書き言葉をあんまりのさばらせちゃいけないんです。そんなことだから、現代政治は混乱する
のであります。