溜池通信

<5月17日>(木)

○わが国を代表する製鉄会社、新日鉄住金さんが来年4月から社名を変更して「日本製鉄」に
なるとのこと。戦前の翼賛体制を思い起こさせる名称ということで、戦後はずっと避けてきた
名前が復活することになるのでありましょう。例えば、戦前の電力会社は「日本発送電」と言
いました。もっともこの会社、典型的な「親方日の丸」体質で、戦時中にはしょっちゅう停電
が起きていた。国策企業は碌なもんじゃない、という典型であったようであります。

○ところで今回の日本製鉄は、「ニホンかニッポンか」という古いテーマを呼び起こした感が
あります。実は企業名としては、「日本銀行」(お札には"Nippon Ginko"と書いてあるし、電
話をかけるとちゃんと「ニッポン銀行です」と返事をする)、「日本郵船」(これもニッポン
ユーセンが正しい)など、ニッポンが優勢です。ところが全般で言うと、ニホンが圧倒的に多
数なんだそうで、それも時代が下るとともにニホン>ニッポンになっているというから驚きで
す。

○少し前に出た記事ですが、これは「ニホン経済新聞」の記事から。

話し言葉では98%が「ニホン」

*1963年調査では「ニホン45.5%」「ニッポン41.8%」と差がなかったが、1993年調査では
「ニホン58%」「ニッポン39%」となり、2003年調査では「ニホン61%」「ニッポン37%」と
差が開きつつあり。

*日銀が「ニッポンギンコー」になった理由は、創生期の通貨当局には「ニホン」よりも
「ニッポン」を愛する薩摩人が多かったから。

*政府見解としては、2009年の麻生内閣が「どっちでもいい」と決めた。ただしどちらかとい
えば、自民党は力強い「ニッポン」を愛好し、民主党系は柔らかい「ニホン」を好むようであ
る。

*スポーツの世界では、「ニッポン」が優勢で、そりゃあそうですわな。「ガンバレ・ニホ
ン」じゃ力が入りませんもの。ここはやっぱり「ニッポン・チャチャチャ」でなきゃいけませ
ん。

○言われてみれば、「日本共産党」「日本社会党」など、左派系、リベラル系は「ニホン」を
使いますね。逆に右派系、保守系は「ニッポン」。そのように考えれば、「鉄は国家なり」の
日本製鉄は、ぜひとも「ニッポン」でなければなりません。よかったね、ニッポンセイテツ。

○ちなみに政府が判断を逃げてしまったために、「ニホンかニッポンか」の判定を押し付けら
れているのがNHKであります。そのNHKの判定はこちらをご参照。そのNHKの正式名称は、柔ら
かくニホン放送協会、ですよね。こういうのも日本の知恵というものでしょうか。