溜池通信 vol.20

  • さっそく最初の方から読み初めましたが、いきなり面白くてかじりついてしまった。年代を隠したら今現在について騙っているとしか思えない。
  • 1999 年前後の氷河期は他人事ではないのだけど、当時は全くこういう側面を意識していなかったからなあ。

大学を出ても仕事がない社会、仕事があることが一種の特権になっているような社会は、活力を保つことはできないし、魅力的ではない。ゆえに政治が失業をなくそうと努力するのは当然のことである。失業がさしせまった問題である場合、「完全雇用」は「政治倫理の確立」や「国際社会への貢献」よりも、優先されるべきテーマとなる。

90年代の米国経済で進行したのは「賃下げ」である。(中略)つまり、「リストラ/賃下げ」→「企業収益向上」→「景気浮揚」→「失業率低下」というサイクルを経て、今日に至ったわけだ。この間、米国政府が失業救済のために特に何かをしたわけではない。むしろ、こうした変化に対応できた労働市場が、長期にわたる米国経済の繁栄をもたらしたという方が適当であろう。

80年代以来の欧米の実験は、雇用を守ろうとした国は失敗し、雇用を作ろうとした国が成功したことを教えてくれる。日本が取り組むべき労働政策も、つまるところ「労働市場の柔軟化」につきる。あからさまな言い方をしてしまうと、労働条件を切り下げて、実質的な賃下げを行うことだ。

雇用の創出において、「新しい情報産業やベンチャービジネスで失業者を吸収する」といったアイデアがよく語られる。それで済めば結構な話だが、いささか非現実的だといわざるを得ない。