溜池通信 vol.491

  • 毎回非常に参考になります。FY2012の日本経済、北朝鮮問題、イラン問題について、該当箇所を引用。

2011 年度の日本経済にのしかかった「震災、超円高、欧州債務危機、タイ洪水」などの苦難はじょじょに克服されつつある。だとしたら、2012 年度の日本経済は強気に見なければならない。特に以下の3 点に注目したい。
1. 為替の 80 円台が定着した効果:3 月日銀短観が示す2012 年度の想定為替レートは、通期で78 円14 銭となった。ということは、輸出企業は足元で6%程度の差益が出ていることになる。
2. 海外経済が落ち着きを取り戻した効果:欧州危機が一段落し、当面はギリシャ総選挙(5/6)やフランス大統領選(4/22&5/6)といった「政治イベント」を待つ状態である。米国経済も少しずつ強い指標が増えてきている。
3. 「3/11」直後だった 1 年前との比較感:今週は東京でも桜が開花しているが、1 年前は「自粛ムード」があったし、そもそも花見どころの気分ではなかった。今年は、花見はもちろんのこと、送別会や歓迎会も普通に行われている。3 月8 日に発表された景気ウォッチャー調査では、判断DI がほとんどの項目で上昇していて、先行きDI は久々に50 を超えている(4 月9 日発表予定の3 月分調査に注目!)。

昨年末に、金正日から金正恩への「代替わり」があったとはいえ、北朝鮮の行動パターンは以前からまったく変わっていない。多少、デフォルメすると下記のようになる。
? いったんは「いい子」を演じて、(核開発で譲歩する)
? ご褒美をもらっておいて、(食糧援助を受ける)
? その直後に手のひらを返す。(ミサイル発射)←今ここ
? 米国が激怒するので、
? 約束を守らずに譲歩を取り下げる

以前、キヤノングローバル戦略研究所が主催する政策シミュレーション「イラン核開発疑惑」(2010 年4 月10-12 日)に参加しました3。(中略)次のような教訓を得ました。イラン問題に対する若干の検討材料になるのではないかと思ってご紹介します。
1. イランを止めるゲームではなく、イスラエルを止めるゲームであった。――イランのような国が本気で核開発を始めた場合、周囲の国が止めることは容易ではない。むしろ止めなきゃいけないのは、イスラエルの単独軍事行動である。
2. この問題について、日本国政府にできることは少ない。――日本外交のプレゼンス向上をめざして、核不拡散を目指す広島会議を提唱するなど、いろいろ試してみたのですが、あんまり役には立ちませんでしたな。
3. 権力者の立場というものは、やっぱり怖いものがある。――日本国首相に成りきっているうちに、だんだん平常心を失っていきました。特に1日目の夜を過ぎた辺りから、極端に悪い情報を無視するようになっていました。いやホント、権力の座は人間を麻痺させますね。たとえ2 日間のゲームであっても。
http://www.canon-igs.org/research_papers/security/20100924_855.html