かんべえの不規則発言

  • こういう物の見方を出来るように心がけている次第ではありますが、一次情報の取り扱いは難しいっす。

<6月20日>(金)

中略

○全く話は変わるのだが、日本のODAについて、意外と知られていない事実をご紹介しておこ
う。

○「日本のODAはピーク時の半額以下になった」とはよく言われるところである。事実、政府
全体のODA予算は、1997年度の1兆1687億円が最高で、2014年度は5502億円と半減している。と
ころがこれは、一般会計当初予算の話であって、事業予算の全体額ということになると全く
違った景色が見えてくる。

○すなわち、2013年度のODA事業予算総額には、一般会計5573億円と特別会計293億円が拠出さ
れている。この範囲内から、無償協力1642億円、技術協力3259億円といった「あげちゃう」お
金が支出されることになる。ところがですな、日本の援助の中心となっているのは「円借款
(9236億円)でありまして、これらは財政投融資資金などでファイナンスされている。結果と
して、ODAの事業予算の全体額は1兆6902億円にも達するのです。すなわち、「貸してあげる」
お金を合わせると、結構巨大な金額になるのです。

○しかも最近では、「昔貸してあげたお金が返ってくる分」がなんと年間6400億円もあるんだ
とか。最近の途上国は、中国を筆頭に意外と真面目に返済してくれるし、貸し倒れの比率も以
前に比べれば下がっているようなのです。

○そうだとすると気になるのは、「対中円借款(総額約3兆円と言われる)のうち、どの程度
が返済済みなのか」「金利を付けたトータルの返済額はどれくらいになるのか」「残っている
のはいくらぐらいなのか」といったところです。日中関係を考える上で、非常に重要なファク
ターだと思うのですが、これらのデータは簡単には見当たらないのですねえ。

ODA白書を隅から隅まで読むとか、毎年のデータを突き合わせるなどすればわかるのかもし
れません。ちょっと不思議な感じがします。


<6月21日>(土)

○昨日の疑問につき、親切な読者から下記のご指摘がありました。


お役に立つかどうかわかりませんが、JICAの年次報告書の資料編に国別の円借款残高が掲載さ
れています。中国の残高は2012年度末は16,280億円となっています(2008年度末は18,602億円
ありました)。

因みに、この残高は累積実行額と累積回収額の差であり、会計上、JICAのバランスシートに
のってくる数字とは異なるそうです(同じ資料には累計承諾額は載っていますが、累計実行額
や累積回収額は記載されていません)。

広く知られています通り、中国への円借款の新規案件承諾は2007年度までで終了しましたが、
今回の資料をみると2012年度にも過去承諾案件の実行はまだなされているようです。


○筆者の疑問に対する答えは、「中国に対する累積承諾額は約3.3兆円。残高は約1.6兆
円」ということになります。ざっくり半分は返し終わっている計算になりますね。年間の回収
額は1000億円くらいなので、完済は相当先になるでしょうけれども。ご指摘、どうもあり
がとうございました。