かんべえの不規則発言

<4月30日>(木)
○議会合同演説の動画はこちらをご参照。昨晩は数えながら見ておりましたが、スタンディン
グオベーションによる中断は13回に及びました。ここが重要なところでありまして、それが足
りないと「失敗だったね」と言われてしまいます。拍手してもらう、できれば立り上がっても
らう、というのが米国議会における基本的なお作法というものでございます。

○演説の全文はこちらをご参照。ここにはいろんな仕掛けがしてあって、例えばキャロライ
ン・ケネディ大使を紹介する場面や、昭恵夫人を紹介する場面では、これは議員さんたちも礼
儀として立たなければなりません。もちろんローレンス・スノーデン海兵隊中将をその場に呼
んだのもヒットでありました。さらに、その隣に硫黄島の戦いを指揮した栗林大将の孫である
新藤前総務大臣を配置した、というのも心憎い配慮でした。この辺の手法は、一般教書演説で
はしょっちゅう使われている手口でありまして、シャーロック・ホームズ氏がその場にいた
ら、"It's an elementary, Dr.Watson."と評したことでしょう。

○さらに上院議員と下院議員たちを前に、演説の冒頭部分で以下のような「ヨイショ」するの
は、ありふれた手法ではありますけれども、確実に好感度を上げたことでしょう。なにしろ議
員さんたちは相身互いの身分。仲間をよく言ってもらえることで、万に一つも心証を損ねるこ
とはありません。つかみはバッチリ、というやつです。


皆様を前にして胸中を去来しますのは、日本が大使としてお迎えした偉大な議会人のお名前で
す。マイク・マンスフィールドウォルター・モンデール、トム・フォーリー、そしてハワー
ド・ベイカー。民主主義の輝くチャンピオンを大使として送って下さいましたことを、日本国
民を代表して、感謝申し上げます。


○ほかにもいろんな点を指摘できるのですが、日本外交はこんな風にえげつないくらいに人心
掌握術を使えるようになったのか、と思うと感慨深いものがあります。今回の米国への公式訪
問では、外務省は全力投球していましたからね。「8日間で4都市を回る」という日程を立てら
れた時点で、外交当局の士気は大いに上がったことでしょう。

○つくづく思うのは、「外遊」とはなんと含蓄のある日本語なのか、ということであります。
首脳が海外で遊んでいるように見えることが、実はとっても大事な仕事なのであります。政策
や首脳だけが大事なのではない。草の根レベルで「日本」をアピールすることが重要なので
す。この後、安倍首相はサンフランシスコとロサンゼルスに滞在します。まだまだサプライズ
は用意されているでしょうし、ハプニングだって起こり得る。そこが「外遊」という仕事の真
剣勝負なところなのであります。

○果たして2015年の訪米において、10年後に思い起こされるのはどのシーンなのか。まだまだ
目が離せない訪米の後半戦であります。