かんべえの不規則発言

<9月10日>(火)

○消費税増税問題について、言い忘れていたことを少々。

○ほとんどの人は、消費者の立場から発言している。つまり「今までなら1050円払っていたも
のが、来年春からは1080円になる」ということである。あるいは、年間300万円使うと今なら
消費税は15万円だが、これが24万円になると9万円の負担増なので、消費は冷え込むはずだ、
ということである。

○ところが実際に消費税を納入するのは、企業や商店などの事業主である。前年の売り上げが
1000万円を超えると、税務署から通知が来て、その2年後から消費税を払わなければならなく
なる。個人事業主は3月15日に確定申告の締め切りが来るが、消費税の締め切りは4月1日なの
で、慌ただしく3月後半に納税の義務を果たすことになる。法人の場合は決算日から2か月後で
ある。

○これが決して簡単ではない。特に複数の事業を行っている商店は、見なしの経費率がそれぞ
れ違ったりする。その辺の事情をよく分かっているならば、「税率を毎年1%ずつ上げればい
い」などという意見は出てくるはずがないと思うのである。消費税論議をやる際に、商店業の
方々は「このエコノミストという人たちは、実務を知らないんだなあ」と思って呆れているの
ではないかと拝察する。

○実際のところ、総合商社たる弊社では「来年4月からの納税についての社内講習会」なんぞ
を既に始めている。輸出入に関しては、いろいろ例外規定があるらしくて、この辺は会計のプ
ロの世界である。半年前なんだから、準備をするのは当たり前である。今から予定を変更され
たら、どんな混乱が生じるか見当もつかない。

○そもそもリフレ論者の中には、税率の上げ方を変えるときに法改正が不要だと勘違いしてい
た人もいたそうなので、こうなるともうおめでたいとしか言いようがない。10月後半からの臨
時国会で、どうやって審議時間を確保するつもりなんだろう。「スポーツ庁を作りましょう」
という法案ならば、今の勢いならば3日で通るだろう。増税法案の予定変更なんて、それこそ
鬼が出るか蛇が出るか分からない。

○ということで、マクロのエコノミストというものは、まったくリアリズムのない世界で生き
ているおめでたい人たちなのではないかと思う。初歩的な話だと思うんだけどな。