溜池通信

かんべえの不規則発言

<5月29日>(水)

○上海からシンクタンク研究員が来訪。米中貿易戦争やら諸般の情勢につ
いて意見交換。

○多少は「ヨイショ」もあるのだろうが、「今や日本は、世界における自
由貿易の旗手ですねえ」などと先方がいう。

「うーん、そうだなあ。TPP11はあるし、日欧EPAはあるし」

「RCEPだって、今年中に成立するかもしれません」

「そうだよねー、RCEPはインドが問題なんだけど、インドはモディ首相が
選挙に勝っちゃったからねえ。まあ、パキスタンを空爆するあたり、根性
が入ってるからなあ」

○そこでハッと思い付いたのだが、RCEPができてしまうと、日本は世界の
主要国のほとんどとFTAが結べてしまうことになる。いや、アメリカが残
っているのだが、そのアメリカとはいずれFTAを締結することになるのだ
ろう。農産物問題があるからね。トランプさんがツィートしていたように、
8月にまとまるはずがないのであるが。まあ、そういうことは、あんまり
気にしてはいけない。ここは"Don't take him literally."の法則を思い
出すべきところである。

○ということで、日本はTPPで太平洋諸国、日EUでEU、RCEPで中国と韓国
とインドとFTAが出来る。これに日米FTAが加わる。そこまで行ってしまう
と、G20の国で残るはブラジルとアルゼンチンとサウジアラビアと南アく
らい。世界のGDPの8割以上とFTAが結べてしまうことになる。

「うーん、でも、なぜ日本がここまで貿易自由化できたかというと、それ
はトランプさんがTPPを抜けてくれたからですな。アメリカが抜けちゃっ
たから、仕方がなく日本が頑張って、TPPの残り11か国でまとめた。そし
たら、EUが危機感を抱いて、日本との交渉を急いでくれた。日本の実力で
はないんです。元はと言えば、トランプさんのお蔭なんです」――なんと
いう逆説的状況でありましょうや。

○ホントに隔世の感があります。2013年に日本がTPP交渉に遅れて参加し
た時には、「めんどくさい国が仲間に入ってきたなあ」「でも、GDPは大
きいし、農産物をいっぱい買ってくれそうだから、まっいいか」みたいな
目で見られていたのであるが。