かんべえの不規則発言

<12月18日>(月)

○この数字をメモしておきましょう。

●年代別の金融資産残高を見ると、この25年間で60歳以上の保有割合が倍増し、約6割を占め
ている(60歳代が34.1%、70歳以上が25.4%)。

――1989年の時点では、それぞれ22.9%と9.0%(足して3割)に過ぎませんでした。まあ、当
時(平成元年)はまだ平均寿命もそれほど長くはなかったのでしょう。

●わが国の個人金融資産約1700兆円のうち、60歳代以上が約6割(約1000兆円)の資産を保有
している。

――恐るべき金額です。ちなみに65歳以上の人口は3460万人。仮に60歳以上人口が4000万人だ
とすると、単純平均で一人当たり2500万円(!)となります。

○日本の個人消費を拡大するには、この1000兆円を使ってもらうことが何よりの近道です。賃
上げ3%よりもよっぽどそっちの方が効くはずです。そもそも政府の口車に乗せられて、1回
こっきりの法人減税を当てにして、今後ずうーっと影響が残る賃上げを決断してしまう経営
者って、アホだと思いませんか?

○それではなぜ高齢者の資金は使われないのか。その答えはここにあります。

●年金支給開始時に、最低限準備しておくべき金融資産残高(アンケート)は約2100万円。

――ときどき「老後資金は1億円は必要だ」とか言って脅かす人が居ますけど、このくらいで
いいらしいです。

●60歳代の世代(二人以上の世帯、2016年)が有する平均の金融資産残高は、平均では1600万
円だが、メディアン(中央値=100人中50番目の数値)では600万円に過ぎない。

――典型的な平均マジックですね。金融資産はごく一部の人がいっぱい持ってますから、こう
いう差が生じるわけです。

○高齢世代が持つアセットの格差はそれほど大きいということになります。まさしくトマ・ピ
ケティの世界ですね。もっとも日本という国は、欧米や中国などとは違って「象の鼻」みたい
な議論は起きていません。格差という面では、おどろくほど均質的な国であって、なおかつ相
続税が高い。アメリカは今度の税制改正で、いよいよ遺産税がなくなるみたいですけど、いい
んでしょうかねえ。