いま世界経済で起きている大変なこと―奈落の底に沈む国、V字回復する国

いま世界経済で起きている大変なこと―奈落の底に沈む国、V字回復する国

  • 前作が面白かったので続けて読んでみましたが、同じような傾向だった。きっと、この作者の芸風なんだと思うことに。結論部は同意できるし真っ当なことを行っているのだけど、思考過程というか、説明がなんとも中二病というか痛い人丸出しなのがちょっと..
  • あと、ここまで説明するなら、もう一歩踏み込んだ分析も書いて欲しい。例えば、春節で帰省した労働者が戻ってこなくなった背景とか、胡錦涛が米国訪問してオバマが雇用増えると喜んだ翌日にボーイングが出したプレスリリースの話とか、ロボサイナーのインパクトとか。
  • でも、総じて読む価値ありますね。最後の金投資の話は意味不明だったので飛ばしたけど。ここまで語った上で金投資の話するなら、ドル建てじゃなくて円建てで計算したデータも出せと。
  • 奥付を見ると2011/3/14なので、発売日の前後で震災にぶつかった様子。リーマンショック以前の本が今役に立たないのと同じく、震災前の本が..ということにはならなかったのでよかったですわ。

p.79
台湾でも韓国製車両を導入したら故障が続出し、しかもメーカーは偽装倒産。父さん会社を引き継いだ会社がこれまた我関せずという態度に終始したため、いまや、台湾では韓国メーカーは出入り禁止となっている。「安物買いの銭失い」に懲りて、新しい建設計画では日立に発注することとなった。

p.111
日本政策金融公庫が2010年末に実施した小企業対象のアンケート調査では、円高でも事業に「マイナスの影響がある」と答えたのは16.8%だけだった。大企業ともなれば、もっと悠然たるものだ。2000年から2009年までで目減り必死の米ドル建て輸出の比率を52.4%から48.9%に下げる一方、円建て輸出の比率を36.1%から41.0%に上げている。

pp.111-112
貿易収支や経常収支の最新データが全国紙の朝刊紙面から夕刊紙面に格下げになっているのだ。貿易収支も安定的に黒字が続いているし、ましてや過去の投融資に対する配当や金利収入を意味する所得収支は盤石の強みを示している。こんな数字を見せられては、「円高=日本経済危機」説がかたなしだからだ。

p.129
従業員のために便利だからという理由で、必ずコーポレートカードを所有することを欧米の金融機関は経営者にしつこく勧める。うっかりセールストークに乗せられて所有したらどうなるか?企業融資レベルの金利では絶対に融資してくれない羽目に陥るだろう。取引先との金融機関に融資を申請しても、「貴社にはコーポレートカードをお渡ししてあるでしょう?このカードで必要金額を引き出してください」と冷たく指示されるのがオチだ。

pp.138-139
たいてい住宅のような一生一代の買い物をする時には、慎重な人なら頭金は20%くらい用意してローンを組む。ということは、もう既に自分が払い込んで自分にモノになっているぶん、すなわちエクティがマイナスになっている人は相当いると言うことだ。マイナスになっている人が、ローン返済中世帯のうちの25%以上はいるはずである。ひょっとしたら40%近いかもしれない。
こうなると、引っ越したくても家を売っただけではローンが完済できないので引っ越せない。払ってもマイナスになることが分かっているローンを払い続けざるを得ない。
ネガティブエクイティのローン世帯がかなり長期間、アメリカ住宅市場が再生する足を引っ張り続ける。そのため、少なくとも一世代は確実に住宅産業は低迷すると判断せざるを得ないのだ。

pp.141-142
「ロボ・サイナー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。書類の所定欄に機械的にサインするだけの「サイン用ロボット」と皮肉られる臨時雇いの事務員のことを指すのだが、彼らの存在がひょんな事から明るみに出てしまったのである。(中略)
ややこしくて煩雑で退屈な作業だと思うが、重要な業務であるからには法律的ルールに則って正確な仕事が要求されるのはいうまでもない。
ところが猫の手も借りたいほど忙しかったためなのか、効率最優先という意識からなのか、きちんと資格を持った責任者がサインすることになっているにもかかわらず、臨時雇いの事務員達が何十秒に一見というハイペースで処理していたことが判明してしまった。(中略)
このスキャンダルが暴露されたのは昨年秋だったが、不動産売買契約や金銭貸借契約書類が不備でどんなに延滞が続いても差し押さえが出来ないという問題点が認識され始めたのは、サブプライム・ローンの附戸佐うさん担保証券が世の中に広まった直後からだった。

p.198
中国リスクが目立ち始めたのは2010年2月の春節のころからである。都市労働者が春節で内陸部の実家に帰省するとそのまま戻らなくなってしまったのである。労働者不足で倒産する工場も続出している。

pp.224-225
2009年は輸出が不振を極めたため特に低かったが、日本経済の貿易依存度、あるいはy宇出依存度の低さも鮮明である。09年でさえ、日本経済は輸出がGDPの12.5%、輸入12.2%、純輸出は統計的誤差の範囲内0.2%だったが、それでもきっちり貿易黒字を維持している。リーマンショックによる金融市場の世界的混乱、設備投資の萎縮、消費財では質より価格閃光が高まるという最悪の条件下でさえ、日本はやはり貿易黒字を確保したのだ。